私は体に彫物があります。
刺青やタトゥーについてはいろんな意見がありますので、
皆様それぞれのご意見を大切にしていただきたいと思います。
しかしそういった活発な議論の主軸が
彫物を施された人を中心としたものがほとんどであり、
刺青(以後タトゥーや彫物についても刺青で統一します)自体の芸術性が議論になることは
とても少なく感じます。
かつては葛飾北斎や歌川国芳など日本の江戸期を代表する芸術家が絵師として
刺青の下絵を施していました。
開国以降、日本にはたくさんの外国人が訪れるようになりましたが、
彼ら外国人が驚いたのが、日本人が裸でいること、だったそうです。
職人と呼ばれる労働者はもちろん、混浴文化にもみられるよう屋外で女性が肌を露出することが
日本では「当たり前」だったのですが、
アダムとイブの禁断の果実からもわかるよう、裸でいること=恥ずべきことという価値観を持った外国人は
文明のある日本という国において裸族文化が残っているのが不思議で仕方なかったそうです。
文明をもたらす(と当時は思っていた)外国人の目を気にして、
明治政府は裸体禁止令を出しました。
その成果は今日に見られる通りです。
ただそこで置いてけぼりになったのが刺青です。
この裸体禁止令とほぼ同時に刺青禁止令も発令されました。
理由は同じく屋外で肌を露出する機会を減らそうとしたわけです。
そして皮肉なことに裸でいる日本人にたいそう驚いた外国人でしたが、
日本の伝統的な刺青の技法や表現に衝撃を受け、間も無くヨーロッパでは和彫が流行しました。
英国王族が横浜でこっそりと和彫を施してもらった、との記録も残っています。
海外からの目を気にして禁止した刺青が
海外で流行するというズレっぷりがお上っぽいですね(笑)
刺青は芸術です。
タブーとされ不遇な時代を迎え、
さらにはその性質上、保存ができない芸術品。※
反社会性という要素も加わって、その美しさはなお際立っていると思います。
刺青が日本においては今後も陽のあたる場所にでることはないと思いますが、
その芸術性までもが陽に当たらないのはとても残念に思います。
※(標本として保存されているものもありますが、ハリは失われ、色は抜け、芸術性は皆無です)